きらいになれないときは

日記とフィクション

電車が見たくて歩いた

 

コンビニから漏れる光

 

後ろから聞こえる足音

大きな光

イヤホンをしてるから聴こえなくて

ボンヤリ端っこに立ち止まって振り返る

 

 

 

ぐるぐるに巻いたマフラーは暖かいけれど

頰はもうピンと張っている

 

袖をだらしなく伸ばして

踵を引きずるようにして歩く

 

好きなところへ向かう

電車が見えるところ

階段を登って欄干のすきま

 

振り返って上を見ても電車

 

昼も夜も誰も立ち止まらない

 

 

途中に喫茶店と小料理屋があるけど

いつか友達と行ってみたいと思っている

 

 

暇だなあと店へ繰り出して、それから

やることないなあと、あの場所に行く

 

 

今はひとり

 

 

イヤホンから聴こえるのはあのときの歌

 

 

誰にもあげない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

靴下が何度も足首のあたりまで落ちてしまっていた。何度直しても落ちてくる。

 

春の陽の眩しさは特殊で、普通が全て取り払われてわたしを特別にしていたけれど

その魔法が剥がされてしまう気がして、ずっと気がかりだった。

 

 

 

電車に乗る。いつもの電車だ。

大きな駅を通らない通学電車。

ボックス席に座るために立つ位置。

見飽きた広告と、見飽きない景色。

 

変わっているのに変わらないものと、変わらないのに変わって見えてしまうもの。

 

 

 

制服のシャツは暑かった。

湿気をすべて閉じ込めて、汗も閉じ込めていた。でも、この服はわたしを強くしていた。

くしゃくしゃになっても、これは素肌から遠ざけるフィルタだった。

 

 

 

この気持ちは、誰にも見せない。

自分が見えている世界を誰にも分けない。

イヤホンから流れる音楽は世界中でわたししか聴けない音楽で、この世界はわたしだけのもの。

 

本当は誰かにあげたかったけど、差し出してみたら形は変わってしまった。

本当はもっと尊くて、本当はもっと綺麗で

素敵なもので、意味のあるもので

 

 

そんな悔しさが、苦しさが、悲しさが、夜中に全部押し寄せる。

自分だけの特別も、平べったく直される 訂正されて 評論されて 分類される。

 

愛とは、恋とは なんて

 

本当の本当は、きっとこの胸の苦しさ

きっと誰にも、誰にもわかって欲しくない

 

 

だから、この気持ちはどこにもいかない

ベッドの上で流さない涙

メイク落としがうまく流さなくて赤く充血した瞳 

言いたいことを全部文字にして、全部消してしまう26:00

 

 

誰にもあげない

わたしの地獄

 

 

 

 

まぬけ

 

 

なんだか急に夏が来てしまったみたいだった

 

例えば玄関のチャイムが突然鳴った時 Tシャツに寝癖のついた頭でバタバタと出ていった時の自分の姿 間抜けでなんだか恥ずかしい時のあの感じだった

 

少し蒸れる服の中の空気が忘れていた夏を思い出させる

 

 

春の場所はしっかりと覚えているはずなのに薄い桜の色が透き通る緑に変わってしまうと遠い昔になってしまう

カレンダーに半袖を着始める日付が書いてあればいいのに

きっと素足にサンダルで歩けば風の通り道が足元に出来るのだ

 

涼しさを感じたら、夏だ

冬の寒さも春の陽気も教えてくれないあの風

 

日焼け止めは毎日きちんと塗らないと上着を軽々しく脱げない 油断した時の日焼けほど悲しいものはない 一年中変わらない肌の色は私にとっての小さな抵抗だ

人に言われて季節を感じてしまうのは嫌だし、自分だけがこっそり知っていたい

時間が経ってしまっていることには気づかずに新しい季節をいつも間抜けに楽しみにしている

 

 

 

 

 

 

この先

 

 

たとえば、選ぶなら

春の陽

 

 

 

選ぶなら、ぬるさ

 

そんなふうにきっとわたしの4年間はキーボードに打ち込んだひらがなを漢字に変える部分のところの変化なのだろうと思う

変わっていないとも言えるけど小さな窓から覗く小さな世界がわたしにとっての世界だった

 

 

人に、いろんなことを言われても、優しくされなくても、なんだかみじめになっても、笑われてしまっても、胸を張れなかったな

耐えられたのは、自分の信じているところだけは絶対に変えられないと思えたからなんでしょう

 

 

 

今後大人になって行くならまだ安心だ

 

でもきっとなれないこともそろそろ気づいてしまうのでした

あわわ…

 

それでもがんばらなきゃいけない理由はわからないけど、先生が言ってくれた

どんな小さな自由でも奪わせてはいけない

 

理不尽も悲しみもたくさん降りかかる時がきて

どんなに怒っても晴れないことも

恨んで恨んで擦り切れること

何度も繰り返して考えてしまう無意味も

これまでたくさん感じたと感じているのだから

この先はそれよりももっとなのでしょう

 

だからほんとうはもっと許されたモラトリアムの中にいたかった

どんなことを言ってももう終わってしまった

 

 

ただ、今全然悲しくも寂しくもないのは実感がないというよりは、ぷっつりと途切れてしまいたくない人のことを少しは大切にできるんじゃないかという自信

、ということにしておこう

 

 

 

一番にはなれないし

真ん中にもなれないし

そんな悔しさばかりの今まででも

やっぱり桜が好きな自分は嫌いじゃない、から

情けない自分のまま

このまま 

 

 

 

 

 

「愛している」は、しまっておいて

 

 

陽の傾いた教室にはただひとりだけが残されていた。

校庭に見えるのは小さな豆粒と綺麗な星で、千奈美にとってその風景は毎日の生活だった。

毎朝セーラー服を着て、食パンを齧り、太腿に力を込めてペダルを押して、風で舞って散らかった前髪を整える日々が彼女の毎日だった。

 

 

 

八時半からホームルームまでの時間は決まって『読書の時間』が設けられていた。

教室の多くは眠気や恋愛や日付と宿題と授業の関連性に関する考察が存在したが、千奈美は『読書の時間』には読書をするという選択肢以外は持っていなかった。

 

 

 

 

千奈美が今月三番目に選んだ本は夏目漱石の『それから』だった。先月には『三四郎』を読んでいたのだけれど、その間に発売されたエンタメ小説が面白くそちらに興味を惹かれていた。

千奈美にとって夏目漱石は人のいい先生だった。

人がいいから先生のことは嫌いではないのだけれど、どんなにいい先生が勉強を教えたところで千奈美には勉強が退屈で仕方なかった。

 

けれど、『読書の時間』を意図するところを考えると千奈美にはそういった選択をするしかなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

一日はざわめきと束の間の沈黙とで過ぎる。それは毎日のこと。

人の声はさまざまな思いを含んで廊下を行き交い教室の隅に溜まって放課後には箒で掃かれて学校の隅に捨てられてしまった。

 

学校の花壇は校務員と緑化委員が育てている。その花を綺麗だと思う人と、花よりも綺麗な人を見つめる人、花の存在に気づかずに三年間が終わる人がいる。

校長先生は毎週の集会で生徒は花だと言った。学校は花壇なのだという。

千奈美は校長先生の話の途中に倒れた三組の吉原くんは大丈夫だっただろうか、と思った。

 

 

 

教室の外に目を向けると、まだ星は煌めいていた。机に顔を伏せると高く響いて突き抜ける金管楽器の音がした。

 

 

 

『読書の時間』に落とした『三四郎』を拾い上げたのは隣の席の天野くんだった。

どうして本を落としてしまったのかはわからなかったけれど、それまで知り得る知識やざわめきの中にあった感触から千奈美にあった変化に名前を付けることは容易かった。

 

 

 

すべての授業が終わった後にまっすぐに向かう階段。上った先の二つ目の教室。

そこから見える景色。

それが千奈美の毎日になった。

 

 

 

 

『読書の時間』が一日に二回あるという毎日。

朝はなんだか気が散ってしまうために設けた特別枠。

ほぼ全員が部活動に入っているので、多くの生徒は図書室には目もくれずに部室や体育館校庭美術室音楽室に散らばった。

そのため今日も放課後の図書室にはひとり残された。

なんだかそれが千奈美には自分だけに与えられた特別に感じた。

 

 

きっと音楽室で感じた惨めさも隠された上履きも悪戯書きをされたノートも伝えて貰えなかったパート別懇親会の日付も、この静けさのためだったのだと思った。

 

明るかった頃から聞こえてくる金管楽器の音だけが耳障りだった。

 

 

 

千奈美にとってこの毎日は満足だった。

ほとんど人が使わない閲覧席に書いた文字はきっと誰にも読まれないのである。

 

ここから見える煌めきに向けた溜め息は誰にも気づかれないはずだ。

 

 

唇を何度か上下させて、小説に学んだ台詞をいくつかなぞる。

音にはせず、丁寧に形を思い出しながらなぞるのだ。

 

 

 

図書室にあるいくつもの哲学よりも神秘的な行為だと感じていた。

テレビやiPhoneの中にあった使い古された言葉さえも自分のものにできる感覚さえあった。

 

 

 

けれど、ひと通りをなぞる頃かたむいていた陽はすっかり落ちてしまっていたので千奈美は最後まで取っておいた言葉は明日に持ち越すことにした。

 

席を立ち、振り返って見える橙の残り香、きっと冷たい空気と、残された本を見た。

きっと誰かの忘れ物だろうと思った。

 

 

千奈美はその題を確認して本棚に戻した。

きちんと、しまっておこう。

 

 

 

 

 

きちんと。

 

 

 

 

 

相対

 

 

 

《親知らずが生えてきたよ怖いから歯医者には行かない》

 

いつまで若者でいられるのだろうかいつまで鬱屈した気持ちとか不安とか、そういうのと戦ってうまくいかないままの自分でも認めてもらえていられるのだろう

大人、になってしまうと認めてもらえてなくても生きていかなくてはいかないのかな

自分が自分であることを、自分で認めてあげなきゃいけないなと焦る夕方 カーテンは閉じて暗い部屋

SNSで歪む口 眉間によるシワ 可愛くない

 

 

ふと考えてしまったのは自分の幸せと人の幸せの形

自分の幸せを感じるのにどうして相対性が必要になってしまうのだろう、とかいう悩みは中高で使い古して

今はまだその先の具体的な解決案をネリネネリネリなど、と思うも

出来ることは結局自分に言い聞かせる等のあまり説得力のないもの

 

 

アルバイトに行きたくないな、とか

あの子のツイートはなんか嫌いだなとか

ああいう時期はもう過ぎたなとか

そういうふうに自由に言えるのはいつまでなんだろうか

 

何と無くだけど、私が若者でいられる時期はもうすぐで終わってしまう気がする

ただそれは「社会人」とかそういうわかりやすい区切りではないということ

きっとふと頭の中で理解できるタイミングができて急に切り替えていかなくてはいけなくなって

そうして私が死んでしまう、気がする

 

 

悪い意味ではきっとないのだけど

別れを告げるのが怖い 

未完成でいたい

完成などできないけれど

諦めることはできてしまうからなあと

嘆き、嘆き嘆き

 

 

夕方になるにつれてなんだか鼻先のツンとした痛みが増してきた気がする

今日だけは、という気分は私の悪癖

でもやめられずに不安と焦り

モラトリアム、延長

 

 

 

 

 

多様性の時代

なのですから

人がどうだっていいのにな

 

いいのにな

 

 

 

幸せになって欲しいなとかそんなふうに

勝手に落ち込んでしまうのはなんでだろう

勝手に不幸な気持ちにされる必要なんてないのにな

無責任さという残酷さまたしても

考え始めると自分への愛が復活

もう何も考えたくなってしまうというオチ

 

 

見えすぎるのがいけないのでは?とここ数年考えているけど非情なのかなそれは

 

 

常にニュースに飛びついてアレコレ意見しなくてはいけないのに疲れました

というこれまた素直な趣のない言葉

 

 

 

 

知らない人に怒り

知らない人に「お気持ちお察しします」

 

昨日まで考えてもなかったくせに

「お悔やみ申し上げます」

みんなきらい

 

 

 

いいよそういうの、って意地悪すぎるね

 

 

 

 

 

 

と、崩壊した論理性

サヨナラ論理〜

 

 

 

 

 

 

 

 

小さなことを溜め込んでブツブツ

抱え込んで一飲み

 

アルバイトへ行くまであと10分

 

 

 

 

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これは海

と、空

 

 

 

まっすぐな線を見ていると落ち着く

色も綺麗だし

 

 

 

 

オワリ

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんな呪いにかかっている

私も

 

魔法になれたら

いいのにな

 

 

単なる懐古主義でない

新しい時代の魔法に なりたい

 

未来

 

大切だからこそきちんとしたいと思えるようになった自暴自棄で自尊心を低くして愛せる自分に離別だけどここから抜け出すのは本当に辛いらしい

何もない空っぽの自分が辛い趣味だと思っていたことがあまり楽しくなくてつらい義務感みたいな何かが生まれて純粋に楽しんでいた時期の自分に帰りたくなるこれは私が私を愛してあげられなかったことの代償ということ

時間はきっとかかるでもちゃんと元気に素直に明るくなって知ってる人みんなみーんなに「私たちちゃんと幸せでーす☆」なども挨拶して回るそんな未来