きらいになれないときは

日記とフィクション

2018-01-01から1年間の記事一覧

誰にもあげない

// 靴下が何度も足首のあたりまで落ちてしまっていた。何度直しても落ちてくる。 春の陽の眩しさは特殊で、普通が全て取り払われてわたしを特別にしていたけれど その魔法が剥がされてしまう気がして、ずっと気がかりだった。 電車に乗る。いつもの電車だ。 …

まぬけ

// なんだか急に夏が来てしまったみたいだった 例えば玄関のチャイムが突然鳴った時 Tシャツに寝癖のついた頭でバタバタと出ていった時の自分の姿 間抜けでなんだか恥ずかしい時のあの感じだった 少し蒸れる服の中の空気が忘れていた夏を思い出させる 春の場…

この先

// たとえば、選ぶなら 春の陽 選ぶなら、ぬるさ そんなふうにきっとわたしの4年間はキーボードに打ち込んだひらがなを漢字に変える部分のところの変化なのだろうと思う 変わっていないとも言えるけど小さな窓から覗く小さな世界がわたしにとっての世界だっ…

「愛している」は、しまっておいて

// 陽の傾いた教室にはただひとりだけが残されていた。 校庭に見えるのは小さな豆粒と綺麗な星で、千奈美にとってその風景は毎日の生活だった。 毎朝セーラー服を着て、食パンを齧り、太腿に力を込めてペダルを押して、風で舞って散らかった前髪を整える日々…

相対

// 《親知らずが生えてきたよ怖いから歯医者には行かない》 いつまで若者でいられるのだろうかいつまで鬱屈した気持ちとか不安とか、そういうのと戦ってうまくいかないままの自分でも認めてもらえていられるのだろう 大人、になってしまうと認めてもらえてな…